評価

最強軍団の裏ボスが存在するシリーズ異端の作品、実況パワフルプロ野球8のレビュー

現在まで長らく野球ゲームの頂点に君臨する実況パワフルプロ野球(以下パワプロ)シリーズがありますが、その中でも異端児であるパワプロ8について思うところが多数ありますので記述します。またサクセスメインで書いていきます。

概要

2001年に発売されたPS2用ソフトで前作に比べて大幅な進化を遂げた作品。オープニングムービーが用意され主題歌も付いた。

野球ゲームとしての対戦は勿論、選手を作成できるお馴染みのサクセスや選手の能力変化が初導入されかなり現実に寄せてきたペナントの2つがメインディッシュだろう。

本作より4か月後に発売された決定版に関してもそこまで大差がないので本稿の内容は決定版も含める。

評価点

対戦野球ゲームとしての面白さ

野球の試合を対戦ゲームとして楽しむなら当時はパワプロくらいしかなかった。そのパワプロが正統進化して、グラフィックが良くなり臨場感あふれる実在の球場で友達と対戦できる点は評価すべき点だろう。

当たり前のことを何故…と思われるだろうが、今遊んでもパワプロの幹となる部分は最新作とそこまで差はない。つまり約20年前で既に完成されていた野球対戦ゲームとしての根っことなる部分は評価しないわけにはいかない。

個人的に実況が安部憲幸という点も見逃せない。

専用オープニングムービーと専用主題歌

本作が専用のオープニングムービー(アニメ)と専用主題歌を導入したシリーズ初の作品でもある。

アニメは京アニ製作で素晴らしい出来である。以降の作品でもアニメが付けられた作品があるが出来栄えで言ったらトップクラス。静止画ばかりではなく良く動くのだ。まあ百聞は一見に如かずと言うし動画リンクを張っとく。

主題歌である「Little Soldier」は米倉千尋が歌う。作品とアニメに非常によくマッチングしている。

ノスタルジックな雰囲気が垣間見えるアニメだが、私とって20年の時が本物のノスタルジーにさせていることは否めない。つまり思い出補正やばいって話。

サクセスの設定がかなりユニーク

サクセスはプロ入りを目指して野球をすることを主とした”ドラフ島”という島が舞台だ。独自の文化を気付きあげており、高校・大学、社会人といった概念は主人公の初期設定で選ぶだけであって物語本編ではほとんど出てこない。

物語自体硬派に甲子園や日本選手権制覇を目指すなんてことはなく、クリアするだけならそれぞれのジムでもらえる球団スタンプを3つ集めて実技試験をクリアすればプロ入りすなわち選手完成となる。

しかし真のエンディングを目指していくなら裏ボスを倒さないといけない。裏ボス自体がTHE・悪の組織って感じなので安直に例えてしまえばパワポケっぽい。

その他にも自称パワー1000のライバルが登場したり、能力値を基準とした選手ランキングが存在するなどシリーズ異端の輝きを放っていることは間違いない。

ペナントやシナリオも充実している

ペナントは3年縛りではあるものの、前作に比べてかなり進化している。選手の成長概念、トレード等の選手獲得の面がより実際の球団経営に寄って来た感じ。

シナリオも実在の名勝負を再現したもので、難易度こそそこそこに高いが往年のファンとっては嬉しいモードだ。

どちらも私自身あまりやりこんでいないので、やや抽象度が高いだろうが面白さ・懐かしさは十分味わえる。

問題点

変化球の切れ味が鋭すぎる

ゲームの根底部分である変化球の軌道だが、正直切れ味がものすごく高い。斜め系の変化球、特にカーブ系の切れ味が尋常ないので打者としてプレイヤーが操作するとまず打てない。

相当やりこんで慣れることも不可能ではないが、それでも容易ではない。つまり初心者~中級者は投げられたらまず打てない。

パワプロシリーズで見るとパワプロ12辺りまでこの傾向が強いことは否めないがその中でも8はキレッキレなのだ。もちろんカーブ以外も侮れない。

サクセスの仕様が煩わしく運要素が強い

通常のパワプロと違い常にエンディングを意識した日程管理が要求される。練習後に貰える特定の球団スタンプを3つ揃えて入団試験?に合格して初めてプロ入りできるのだが、日程を意識していないと期限切れでゲームオーバーになることもしばしば。

マップを歩いてジムや街を巡るわけだがその位置がランダムで運要素が非常に問われる。そして先に述べた球団スタンプも貰えたなかったり、2つ貰えたりとランダムで起こるイベントが日程管理をより煩わしくしている。

また、仲間になるキャラも基本的にランダムで、確率を引いてもそのキャラのチームに勝たないと仲間にならないなど運×実力の面もあるのでパワプロ初心者には厳しい。というか経験者でもめんどくさいな…と思うことは確か。

8は個性が強い点として捉えればいい面もあるが、プロ入りを目指し、強いキャラ作成の為に友情タッグは必須でその仲間を増やすところにもランダム性が付きまとうと考えると、サクセスの基本的な面には常に不満点が付きまとう。

いないと思うがマイキャラだけでオリジナルチームを作成するには途方もない根性と気力が試される。故にそれはとてもオススメできたものではないので、3,4人作ってストーリーを楽しむくらいで捉える方がいい。

サクセス真エンディングへの難易度が高すぎる

ネタバレになるので詳細については後述するが、真エンディングへたどり着くには相当な腕前か徹底した攻略法がなければ到底勝利を収めることができない。

元来パワプロ自体が初心者お断りゲーだが、事パワプロ8は論外。前述した変化球の問題もあるが、守備の動きとりわけ送球に粗さを感じるのも痛い。

で前置きは長くなったがラスボスが異常に強い。エンタメ性が強く今でも語り草になる位インパクトは強い。故にチャレンジングな凄腕ゲーマーやパワプロ上級者でなければ挑まない方が賢明。

勝利するととてつもない経験点が貰え、感動の真エンディングを迎えられるが、負けると一発ゲームオーバーなのだ。幸いセントラルタワーと呼ばれる施設に近寄らなければ戦うことがなく、通常のクリアは問題なく狙えるのである種コナミからの挑戦状と考えれば問題点とも言い難い。

総括

古さからくる野球ゲームとしての粗さが気にはなるが、真面目に作りこまれたペナントやシナリオは出来が良く野球そのものも十分エキサイトに楽しめる。

サクセスはアクが強く問題点こそ多いが、やはりインパクトがシリーズトップクラスであることを考慮すると十分評価に値する。RPG色が強くパワポケっぽいのでそれが好きな人は一度手に取ってみると良いだろう。

以上…

真のラスボス 最強軍団の話(ネタバレ有)

1戦目

ここから先は既プレイヤーと興味本位でこの記事を読んでいる諸君にお届けする。内容はサクセス真・エンディングの事。

ゲーム内日時の11/20までに8人以上集めてセントラルタワーに行くと、パピヨン(二刀流のチートキャラ)が仲間になり神高ママが用意したプレイヤーのチームのコピーと対戦するのだが…

CPUレベルが強力なものであり、尚且つ相手は全員絶好調なのだ。

何が問題かって話で、コピーということは仲間に強力なメンツを揃えると必然的に敵も強くなり難易度が上がる。じゃあザコ集めていけばいいじゃんと思ってもコピー戦に勝利した後の試合がきつくなる。

猪狩兄弟・パピヨン・太田・ミッキー・古谷・長瀬らは確実に欲しい面子で、可能ならできるだけ頭数を揃えた方が有利。(帽子の兄弟は論外)

幸いCPUはオーダーをクソ真面目に組むのでこちらは投手だろうと守備範囲外だろうと一番からパワー重視のオーダーを組んでホームラン狙いすれば勝算は十分。

2戦目(ラスボス)

コピーを倒すと挑むことになる相手はなんと…

歴代OB軍団である。面子は豪華極まりなく名球会入りしたOBもかなり含まれる。とりあえず挑戦している動画が数多くアップされていたのでひとつチョイスしたので観てほしい。

アップされている方はとてつもない腕前の持ち主

私自身も何度か倒したことがあるが毎回ギリギリだった。その中でも強敵の選手を記していく。

野手

・張本勲 (AABDDD AH 広角打法 流し打ち etc…)

2番打者で登場するのは、「喝!」で日曜朝に活躍(?)されているハリー。NPBだけで唯一3000本安打を達成している稀代のヒットメーカーはこのゲームでも健在でミートがバカでかい。足も速く守備力が低いチームだとガンガン走られて面倒。パワーAは流石に盛ってね…?と思う。尚あまりHRは打たれない。

・王貞治 (BADEBD PH チャンス○ 威圧感 etc…)

世界のホームラン王である王さん。通算868本を記録した驚異の長打力は勿論このゲームでも飛ばしまくる。PH持ちのパワーAで205ととてつもない数値を誇り、失投すると一瞬でスタンドにボールを運んでしまい何度ホームランを打たれたことか…。1塁が空いていたら敬遠して問題ない。なんだったら全打席敬遠してもいいのでは…

・小鶴誠 (AABDDD PH チャンス○ 威圧感 etc…)

シーズン打点日本記録である161打点を打った水爆打線の中核。ゲームでもモデルにしている年の記録が表示されるが .355 51本 161打点と初見は乾いた笑いが……。 このゲームで知ったという人も多いはず。というのもラビットボール全盛で尚且つ単年の輝きであったことが挙げられるが、王貞治を差し置いて4番にいるものだからインパクトはでかい。 前置きが長くなってしまったが、その記録に偽りなしと言わんばかりにボールを飛ばしに飛ばしまくる。パワーが193とこちらも超強烈。張本と能力値では似ているが強振でぶんぶん振ってくるのではるかに恐ろしい。余談だが「ボールが止まって見えた」という名言は川上哲治ではなくこの小鶴の発言だったとか。

・長嶋茂雄 (AACCCE AH チャンス○ 逆境○ 威圧感 人気)

ご存じミスタープロ野球。能力値は勿論非常に高く5番打者としても十分すぎる長打力がある。PHではなくAHなのでホームランはそこまで打たれる印象はない。が、逆境持ちで何かと厄介。というか威圧感多すぎて投手のスタミナがゴリゴリ減る。そういった意味でも本当に厄介。

・野村克也 (CAFDBC PH チャンス○ キャッチャー◎ etc…)

ID野球の始祖で、通算出場試合や打席数の記録を持っている人。生涯HR数が王貞治に次ぐ記録を持っている人あってかこのゲームでもバカスカ打ってくる。パワー191でPH持ちだからか6番の長嶋より厄介。個人的に実績を考慮して威圧感あっても良かったのではと…思う。そうなると4人連続で威圧感持ちになっていたから助かると言えば助かる。弱点は走力位だがそもそもHRばかり打ってくるから関係ないと思われる。OB選手なのに全く着色しないで走力FにしたKONAMIは好き。

・山本浩二 (BACBBD AH PH 広角打法 チャンス○ etc…)

ご存じミスター赤ヘル。打撃偏重な伝説最強チームにおいて珍しい守備力も高い人。打撃面はパワー180でPH・AHの両方を持っているからか上位以上に打たれた記憶がある。足も速く長打コースになると危険だが、ゲームの仕様上盗塁が決まりにくいので救われている部分もある。まあしかし7番に山本浩二を置くのやめろマジで。強すぎるから。

・岡田彰布 (AADDCF PH チャンス○)

通称どんでん。8番であってもPH持ちなのが伝説最強チームの恐ろしさを感じる。これまでの打者と変わらずHRをバカスカ打ってくる。特殊なCPUでも割り当てられているのかと疑うほどに打ち取れない。なので個人的に一番強いと感じる。強いて言えば高めのボールになるスローボールをたまに振ってくれる今作なら運次第で三振が取れる。

・控え野手

控えにも門田博光、掛布雅之、中西太らレジェンドOBの名が連なる。投手交代のタイミングで彼らが出てくるがあんまり打たれた記憶がない。単純に1打席だけだから印象に残らないというのはあるかもれない。でも中西太といえばメジャーリーガーをも唸らせた豪打が有名だしスタメンでも良かったのでは…?

投手

・稲尾和久 (147km/h AA Hスライダー6 シュート2 キレ○ 重い球 リリース○ etc…) 

神様仏様稲尾様こと稲尾和久。驚異の高速スライダーが目を引くが、横の変化球なので意外と打ちやすい。またデットボール狙いでガンガン出塁できるので攻略法を知っているかどうかで印象が随分変わる。

山田久志 (147km/h AA シンカー7 カーブ4 ノビ○ etc…)

ミスターサブマリンの異名を持つアンダースロー最多の284勝投手。代名詞のシンカーは変化量7でとても打ちにくい。カーブもなかなかでやはり斜め変化は猛威を振るう。それらを待てばノビのある直球で差し込まれがちなので、ホームランを狙うのが一番難しい相手。斜め変化が得意でもない限り、山田久志から得点は望まないほうが賢明。

・西本聖 (142km/h BA カーブ2 Hシンカー5 シュート6 キレ○ etc…)

ドラフト外投手の最多記録を持ち、昭和の怪物こと江川卓のライバル。二人のことを書くと熱くなっていっぱい書いちゃうからここでは割愛するが、雑草西本の名に偽りなし。いやらしく、そして渋い投球が光る。球速こそ控えめだが変化球がキレッキレで大変打ちにくい。代名詞のシュートを狙うのも悪くないが変化量6なので直球一本でHRを狙うのがベター。まあもっとも直球を投げてきたらの話だが……

・江夏豊 (147km/h CE カーブ6 シュート2 キレ○ ピンチ○ 回復○ 威圧感)

シーズン401という驚異の奪三振日本記録を持っている大投手。奪三振のあらゆる記録を保持しているレジェンド中のレジェンド。先の項で述べたがこのゲームのカーブは強烈という話はしたが、この江夏のカーブこそこのゲームで一番はじき返すのが難しい球だろう。直球も速いし厄介極まりない。もっとも登場するのは後半なのでリードしているということも往々にしてある。それ故に江夏打てなくて苦しんだ記憶はそこまで残っていない。打った記憶もないのだがな……

決定版に登場する選手

4番が落合博満になる。3度の三冠王を達成した男はこのゲームでも半端ない能力で登場する。もちろんHR連発してくる危険性が常に付きまとう恐ろしさがある。表示される成績が目を疑うレベルで凄まじい。

と言っても、決定版では一度しか戦ったことがないので印象を書くか迷ったがせっかくなので。

真・エンディングを通したサクセスの総括

「伝説最強」の名に偽りなしといった強さだ。コピー戦も厳しいが、それ以上に限られた戦力で強敵のOBを相手にする2戦目は相当やりこまないと撃破は厳しい。

裏返せば彼らを倒すために必死でやりこみ挑戦する。といった昭和のゲームさながらの楽しみ方・達成感は他のパワプロにはない希少な価値ともいえよう。配球を研究し、変化球を特打し守備に磨きをかける とやることは多いが伝説最強チームを撃破することはそれだけの価値がある。

また、伝説最強戦のBGMはとてもかっこよく未だに評価が高いからか近年のパワプロにアレンジとして流用されるくらいだ。加えて決戦の球場が名古屋ドームというのもあって雰囲気は抜群。それまでは開放的な市民球場?チックなところで軽快なBGMと共に戦ってきた他のサクセスの試合とのギャップは凄まじい。

と熱く語ってしまったが伝説最強を倒すゲームとして私は捉えているからか、サクセスを何度もやってオリジナル選手だけでチームを作り上げるといった本来のパワプロの楽しみ方は出来そうになかった。強い選手を目指せば目指す程、セントラルタワーを意識してしまう。しかしそう何度も倒せるほど実力はないので一度倒してしまった達成感で8はしばらくいいやってなってしまうのもある種罪深い。

なので8は普通の野球対戦・育成ゲームとしてではなく、伝説最強チームを倒すという遊び方が一番刺激的で、フルHDの最新タイトルではなくあえて今作パワプロ8を手に取る価値があるといえよう。

以上!