評価

禁断の公道暴走を具現化してしまった首都高バトル0のレビュー

私が今でも愛してやまないレースゲームのひとつ、首都高バトル0。

個人的に思い入れが深く、レースゲーマー諸君には是非とも一度手に取ってもらいたい一品なので、本稿ではその魅力について迫っていこう。

概要

首都高バトル0について軽く概要を書いていく。

端的に言えば、首都高速道路を舞台としたレースゲーム。

今でこそ”ストリート”なんて言って茶を濁している人は多いけどあくまで一般公道を暴走するもの。

同じく公道を舞台にしている作品に、「ニード・フォー・スピード」シリーズが挙げられる。(通称NFS) と言ってもカジュアルな作品で尚且つ開発元が欧州・北米で雰囲気は日本のソレとは大きく異なる。

話は逸れたが、この首都高バトルシリーズは国産なので勿論高速道路の作りこみも日本人には馴染みやすいものだ。

本作品は、PS2初期に発売されたもので、DC版を継承したいわば正統進化を果たした作品でもある。また、本作品こそ歴代の中でもピカイチの評価を下す声も多い。

ではそんな本作の魅力について記述していこう。

評価点

豊富な車種

150台を超える豊富な車種が魅力。いまでこそ大したことないなんて思われるだろうが、当時のレースゲームとしてはかなり多い方だった。

バージョンやグレード違いの物を除いても、50台位はいるかなという感覚。後述する問題点に近い話だが、日本のメーカーは一通りあり、ポルシェやBMW、ダッジまで存在しているのでワクワクさせられる。

また、ボス専用のカスタムが施されているものは同車種といえど見た目や性能が大きく異なるものも存在しているので眺めているだけでも飽きない。

再現度が非常に高い首都高

首都高をコースとして再現したゲームは今でこそ増えましたが、それら全ての始祖となるのは間違いなく首都高バトルです。DC版でも素晴らしい再現度でしたが、PS2の性能を発揮したからか非常に高い完成度だった0。

今見ると大したことないだろうが、看板等の作りこみには未だに感心させられる。

道路の形状は勿論、背景に移るオブジェクトまで再現されており、次回作の01と違ってビルやネオンの発色が良い為、バトルせず流してドライブするだけでもその雰囲気は十分。

加えてオービスまで再現されており、稀ではあるが速度超過でフラッシュが焚かれ罰金を取られる。因みにボスのカスタムカーは可変ナンバー装着なので自車として使った場合、罰金は取られない。明らかな違法改造である。

路線も環状線・新環状に横羽、湾岸線等で広さも十分。

別サイトからの情報だが、聞くと湾岸ミッドナイトのゲームもこれベースで作られているとか。それほどまでに当時としては高い完成度を誇っていた訳で、この再現性の高さこそ首都高バトル0の一番の魅力かもしれない。

ボス登場の演出が凝っている

基本的にライバルチームのメンバーを倒していくと最終的にチームのボスが登場する。通常のライバルとは登場の仕方やBGM、カメラワークが異なる為、強敵感がひしひしと感じられる。

また通常のボスよりワンランク上のボス(路線毎に設定されている)は更に違う演出が用意されていて、その速さと相まってインパクト絶大。

この車は見た目も去ることながら、速さ・演出共に脳裏に残っているプレイヤーも多いはず

ゲームは主に2部構成だが、それぞれの部の最後に登場する大ボスや、特殊条件を満たした場合に登場する裏ボスなんかは更に別の演出・BGMが用意されるのでイリーガルな雰囲気抜群。一見の価値あり。

ライバルの設定が細かい

倒したライバル一覧を見ることができるモードには、ライバル全400種に個別のストーリーや走るドラマが書かれている。

元レーサーや医者、女優などバラエティ豊かである。加えて、ライバル同士の相関関係なんかも書かれていて、読んで楽しめる希少なレースゲーム。

中には別作品や実在する人物のオマージュも散見されるので車好きなら尚楽しめる。

ボス級の車のカスタムが奇想天外

ボス級は特殊なカスタムを施してあることが多い。例えば、DTMそっくりな外装をした車、だれがどう見たってJGTCのカルソニックスカイラインが登場する。

シリーズではおなじみの光景だが、当作品は流石にやり過ぎたのか続編ではかなりマイルドになっている。相当怒られたんだろうと容易に想像できる。

メーカーからしたら問題点だが、我々ユーザーからするとかなり面白い改造が多数なので評価点とした。後にも先にもこの点を超えるレースゲームはないと思われる。

問題点

挙動が不安定で操作性が悪い

リアル系のレースゲームに比べると挙動の未熟さが感じられる。まあ2001年発売ということを考慮すると致し方がないかもしれない。

それでもそれなら、カジュアル路線に振ってみるとかして爽快感を出してみても良かったのかな?と感じる。まあ次回作の01がリアル志向を強めた割に評価がイマイチという点を考えると、このあたりが妥当と言われればそうとも言える。

でも400km/h超出せるチューンとかするとマシンが暴れすぎて本当に扱えない。乗りこなせる人でも直線でフラフラしているのが実態。

対戦条件の煩わしいライバルがいる

特定の条件を満たすと登場・対戦可能なライバルとしてワンダラーがいるが、その条件に面倒極まりないものがいくつか存在している。

気にしなくても……と言いたいが、それら全てを倒さないと全クリできないので無視もできない。

時間系はPS2本体の設定を弄るといった荒業も可能だが、走行距離が条件のライバルに関してはかなり面倒。具体的に書くと普通にプレイしているとまず到達できない走行距離だ。

車種毎の性能差が大きい

車種によって出せるパワー差があるので、ゲームクリアを目指すとなると実用的な車種がかなり絞られる

例えば筆者が好きなNSXは1000馬力超級の相手に歯が立たない。80スープラでさえ厳しいと感じる場面があった。

じゃあ何が残るんだよ!!と突っ込まれるかもしれないが、そう 

スカイラインGT-Rですよ。R32・R33・R34。

走行距離で解禁される強力なパーツがないとこれらでさえきつくなりがち。つまりライバル速すぎ。

まあでも現実の首都高でもGT-Rが最速格だったらしいことを考えるとある意味リアル志向かもしれない。

難易度が高い

前述で車種間の性能差がお分かりいただけただろうが、ライバルが強いことがその問題を浮き彫りにしているといっても過言ではない。

というのも、物語後半になると1000馬力オーバーがザラでそもそもパワー負けしてちぎられることもしばしば。

現実の首都高でもパワーウォーズが大正義!みたいな路線があったことからもリアル志向なのかもしれない…

なので好きな車種を使っている人はパワー差で苦しむこと必須。加えて前述した操作性の悪さや、一般車をスラロームすること自体難易度が高い。

収録車種がメーカー非公認

今でこそ大体のゲームが公認をとって収録しているが、当時はむしろ公認とらずにそっくりな車を登場させるゲームが多かった。それは首都高バトル0でも変わらない。これに関しては我々ユーザーにとってあまり気にならない点。

公認をとっておらず、暴走族を助長化させているとか何とかで問題としてきたメーカーがあったとか。どこのメーカーとは言わない

でも、首都高バトル01ではホンダ車以外ほとんど続投したから大丈夫だ!!

ライバル車のAIが未熟

このゲームは一般車が走っているので、それをすり抜けて走るのが醍醐味の一つであり、それはオープニング映像でも推されているシーンのひとつだ。

だがしかし、ライバル車のAIが未熟故に一般車に激突しがち。一台ならまだしも、2台以上一般車がいると大概激突している。

コーナーリングもお世辞にも上手とは言えないが、これらの弱点を突いて格上の相手に勝利を収めることも可能なので一概に不満かと言われればそうとも言い切れない。むしろ救済策かも。

といっても、道幅がとてつもなく広い湾岸線ではAIの未熟さは目立たず、むしろ本来のパワーウォーズ全開な首都高バトルが繰り広げられるのでAIは関係なくなる。つまり物語後半の戦いは非常に厳しい。

後のシリーズに爪痕を残した本作品の功罪

本作品は他のレースゲームにはない禁断の魅力がある。

それはやはり、公道を舞台としている点だ。頭文字Dや湾岸ミッドナイトもあるだろ!って声も聞こえるが、あくまでそれは「行動封鎖したサーキット」として作られており純然たるものではない。というかそうでもしないとメーカー公認として車をゲームに出すことが困難な世になっているのではと想像できる。

しかし本作は非公認で、それをいいことにお構いなしといわんばかりの自由度で表現してしまった。ゲームなんだから別にいいだろ と言いたいが続編の首都高バトル01からかなり表現がマイルドになっている。

挙動もリアル志向に寄せられ、車両自体もごく普通のものになっていった。それ自体悪いこととは思わないが、私が首都高バトルに求めているものとは剥離していった。

強烈な表現を魅力とすると、どうにも続編は凡庸に感じられる。それが証拠に続編がいくつか出たが人気はそこまで振るわず、終焉を迎えたシリーズだ。

車のゲーム自体、グラフィックの進化が凄まじく元気のような比較的ミニマムなメーカーにとっては厳しい時代になった点が大きい。が、それを抜きに考えた場合でも、首都高バトル0のインパクトに勝るものがこのご時世から産まれそうに無いことを鑑みると、禁断の魅力を放つ本作と常に比較され続けるシリーズに対して残した功罪は計り知れないだろう。

個人的な総括

功罪や不満点が一見多いようだが、私はむしろそこも含めてこのゲームを愛している。

最たる例はGT-R無双、1000馬力超級のパワーウォーズ、300km/hオーバーではナーバス過ぎる挙動。

しかし少し視点を変えてほしい。上記で挙げた難点も

現実であってもなんらおかしくないのだ!!

その上で細部まで作られた首都高、発色の良いネオンに不気味なライバル車の数々。そういったものから醸し出されるアンダーグラウンドなパッケージングの本作

言う人に言わせれば、分かり易い挙動や面白さこそないかもしれない。

それでも私は本作こそ、歴代で最も味わい深い首都高バトルであると明言しよう。

そんなミステリアスで、アンダーグラウンドな世界を表現しているレースゲームはまずないので、貴重な追体験を是非あなたにも味わってほしい。